「離したら逃げるでしょ? だから離さない」
「な、なんで……っ」
頭の中ぐちゃぐちゃだよ。
それなのに抱きしめられてドキドキしてるなんて、こんなの絶対おかしい。
「お願い……離して」
「やだ」
ボロボロの姿、さらしたくないよ。
「ねぇ、ほんっと、離し──」
さらに強く身をよじったとき。
「逃げないで、お願い」
「……っ」
ずるい。
「ごめん」
絞り出したような小さな声が聞こえてきた。
なんで、ごめんだなんて……。
高瀬の方が怒ってたんだよ?
それなのに、意味がわからない。
「俺が悪かった」
真面目な声色に、抵抗する気がなくなって、手が力なくだらんと垂れる。
完全に力が抜けたわたしの体。
高瀬が肩にポンと頭を乗せてきた。
「……っ」
「たまちゃんがあいつといるとこ見てムカついた」
「えっ?」
「昨日の朝、あいつといたじゃん。すっげームカついたの」
あいつって、渡瀬くんのこと……?
ムカ、ついた……?
どう、して?
「たまちゃんに触ったあいつのこと、俺はそんなにすぐに許せない」
「な、なんで……?」
もしかして、それで怒ってたの?
どうして高瀬が許せないって思うの……?
わけがわからなくてパニック状態。
「許す気もないよ」
「だから、どうして……?」
「どうしてって、ほんとにわかんない?」
小さく首を縦に振る。



