「こんなかわいいことされると思ってなかった」
「た、高瀬が言ったんだよ」
「うん、そうだね。でも不意打ちすぎて、さ」
そう言いながら高瀬はわたしの肩におでこを乗せた。
フワッと香ったいつもの匂い。髪の毛が頬に当たって、思わずドキッとした。
自分から抱きついたのに、こんなに密着してたら気が変になりそう。
しばらくしてわたしから離れた高瀬は、コホンと小さく咳払いをしてつぶやいた。
「そろそろ戻ろっか」
「……うん」
離れた体がちょっと寂しいなんて、そんなふうに思うわたしはどうかしてる。
「このままだと俺、なにするかわかんないし」
ワシャワシャ自分の髪を乱しながら、未だに余裕がなさそうな高瀬を見て、それはどういう意味だろうって。
頭の中が疑問でいっぱいになった。



