ガシャッ。


黒羽くんが帰ってきた。


押し掛けるのもなんだから、私は急いでメッセージを送った。



"おかえりなさい"


"何があったか教えてほしいです"



しかし、その晩返事が来ることはなかった。


翌朝も階段の掃除に現れることなく、気付いたら彼は学校に行っていた。



「黒ちゃんどうしたんだろうねえ。カノジョとなんかあったのかしら?ときちゃんの卵焼きも食べないで行くなんて...。年頃の男の子の世話はほんと大変ねえ」



何十人もの少年を見てきた沼口さんでさえぼやくほど、黒羽くんは手がかかるらしい。


私はテーブルに乗ったままの卵焼きを見て胸がちくりと痛くなった。


そしてその痛みはじわじわと全身に広がっていく。


私は痛みに捕らわれないよう、せっせと体を動かし、家事をこなしていったのだった。