からふる。~第27話~

と、私が迷っていると黒羽くんが手をパンと叩いた。



「よし、映画はナシだ。ショッピングに切り替えよう」


「えっ?」


「さあやの冬服不足が深刻なのは知ってるんだ。毎日セーターにジーパンじゃせっかくの美貌が台無しだ」



び、び、美貌って...。


私、そんな美人じゃないんだけど。



「おれさ、密かにバイトしてんだよ。だから金はある。心配するな」


「バイト?!」


「何驚いてんだよ。金がないなら働くのがこの世の中だろうが」


「それはそうだけど、貴重なお金を私に投資しなくていいよ。私に投資するくらいなら、桃さんに色んなもの買ってあげなよ」


「わかんねえやつだなぁ」



黒羽くんが私の頭に手を乗せる。


一瞬とくんと胸が跳ねて目を泳がせてしまう。



「さあやはおれにとって自分の命より大事なやつなんだ。唯一無二の大親友だからな」



大親友が自分の命より大事?


そんなわけない。


だいたいにおいてカノジョの方が大事に決まってる。



「桃さんはカノジョだから私より大事だよね?なら、私なんて...」


「どっちが上か下かなんて、そんなのねえよ。おれはどっちも大事だ。黒羽玲央という人間が成り立つ上で大事なもんは大事なんだ。優劣なんてねえ。つべこべ言ってないでいくぞ!」


「ちょ、ちょっと...!」



黒羽くんに手を引かれるまま私は駆け出した。


計画性のないその言動に振り回されっぱなしだけど...。


だけどね、なぜだろう。


その背中を追いかけている私は笑ってるんだ。


その理由はまだ分からない。


今はただ追いかけるだけ。



続く...