私はこの句を初めて読んだ時、共感してしまったんだ。

何で桜は、すぐに散ってしまうのか。もっと長いこと咲いててほしいなって……そうすれば、彼女が隣にいるような感覚を長く味わえたのに。

「……世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし」

これは、在原業平が読んだ句。世の中に、もし全く桜がなかったとしたら、春の心は穏やかにいられるだろうに、という意味のある句。

本当にその通りだと思う。でも、もしかしたら桜がなくても思い出してしまうかもしれない。……いや、桜がなかったら、今頃私はいなかった……?

「……こうとも言いません?散ればこそいとど桜はめでたけれ憂き世になにか久しかるべき……と」

「……伊勢物語の第82段にある歌だね。確か、散るからこそ、いっそう桜は素晴らしい……って感じの意味だったよね」

私の言葉に、ブロッサムは「はい」と頷いた。

「……私、親友が死んだとき、私も自殺しようかって考えてしまった。今でも辛い……でも、桜を見てるとね。親友が隣にいてくれてるような気がして……」

「……それ、私です。私が、あなたを支えられたら……と、力を使って心を支えていたのですよ」

「そっか……ありがと、ブロッサム。何だか軽くなっちゃった」