私は目を逸らそうとした彼の目をまっすぐ見つめた。

「ここで売り上げをアップしないと私たちのチームは解散なんです」

「解散?」

「はい、次に売り上げが望めないと休刊だと上からお達しがきました」

彼はようやく私から視線を外すと、小さくため息をつき額に手を当て再び目をつむる。

「だから、錦小路社長の力が必要なんです。勝手なことを言ってるのも十分承知しています。でも、それしか方法が……」

「そんなこと俺には関係ない。お前らの事情に俺を巻き込むな」

正直に言い過ぎた?後悔先に立たず。

私は下唇を噛みうつ向いた。

「藤 都」

「は、はい?」

初めて「お前」ではなく名前で呼ばれたことに驚き顔を上げる。

っていうか、私の名前をちゃんと覚えてくれてたことに少し感動した。

「お前は一人でチームを守るつもりか?」

「一人でってことはないですが、この企画にかかっていることは確かだと思っています」

「たった一つの企画の成功くらいで売り上げが伸びると思うな。そんなに世の中は甘くない」

彼は体を起こし、足を組み替えると私に視線を向け続けた。

「お前はさっき自分は変わるんだと言ったな。変わらなければならないチャンスは早々ない。お前の雑誌もそうだ。マンネリだと思うなら、それは一記事だけではなく全てを変える時期が来てるんじゃないのか」

全てを変える?

「お前一人であがいてたってどうにもならない。チーム全体で雑誌のコンセプトそのものから見直すべきだ。まぁそんな時間はなさそうだがな」

「はい、時間はありません。だから」

「だから、とりあえず俺の記事を載せて一時しのぎするってことか?お前は一体何が目的でこの雑誌に関わってるんだ。売り上げだけ上げればそれでいいのか?読者の気持ちはそっちのけだな」

「私は……」

私は声を落とした。

そういえば、私は一体何が目的でこの出版社に入ったんだろう。

がんばって働いている女性読者に元気を与えたかったんだ。

彼からの言葉で、いつの間にか自分の目的が遥か遠くに離れてしまっていることに気付く。