「おはよう、都」
そう声をかけてきたのは、私のデスクの正面に座り、今時珍しいおかっぱ頭の坂東 智恵先輩 二十九歳。
女性雑誌編集課の中で唯一の既婚女性。
食べるのが大好きで、いつももぐもぐと口を動かしている。ちょっぴり太目だけれど、本人は全く気にしていない。私から食べることを奪ったら何も残らないと豪語するくらいだ。
出社直後だと言うのに、彼女のデスクの上には半分食べかけのアンパンが置いてある。
「坂東さん、そのパンは朝ごはんですか?」
しらっとした顔で敢えて尋ねてみる。
「いやーね、朝ごはんはしっかり家で食べてきたわよ。これは、仕事に集中するために血糖値を上げる燃料みたいなもんだわ」
私は彼女の受け答えに笑いながら、リュックからパソコンを取り出しデスクの上に置いた。
斜め前に座る私たちのお目付け役でもある川西 誠副編集長が目を細めてそんな私たちの様子を見ている。
彼は五十歳。編集長よりも年上だけど、いつも平穏な性格でそんなことは彼にとってはどうでもいいらしい。でも、編集長が忙しくて手が空いていない時はいつも嫌な顔一つせず相談に乗ってくれた。やや心配性なのが難点だけどいい上司だ。
そう声をかけてきたのは、私のデスクの正面に座り、今時珍しいおかっぱ頭の坂東 智恵先輩 二十九歳。
女性雑誌編集課の中で唯一の既婚女性。
食べるのが大好きで、いつももぐもぐと口を動かしている。ちょっぴり太目だけれど、本人は全く気にしていない。私から食べることを奪ったら何も残らないと豪語するくらいだ。
出社直後だと言うのに、彼女のデスクの上には半分食べかけのアンパンが置いてある。
「坂東さん、そのパンは朝ごはんですか?」
しらっとした顔で敢えて尋ねてみる。
「いやーね、朝ごはんはしっかり家で食べてきたわよ。これは、仕事に集中するために血糖値を上げる燃料みたいなもんだわ」
私は彼女の受け答えに笑いながら、リュックからパソコンを取り出しデスクの上に置いた。
斜め前に座る私たちのお目付け役でもある川西 誠副編集長が目を細めてそんな私たちの様子を見ている。
彼は五十歳。編集長よりも年上だけど、いつも平穏な性格でそんなことは彼にとってはどうでもいいらしい。でも、編集長が忙しくて手が空いていない時はいつも嫌な顔一つせず相談に乗ってくれた。やや心配性なのが難点だけどいい上司だ。



