7.彼から見た私って?

丁度リビングに戻ってきた彼にダイニングテーブルで震えているスマホを指さす。

彼は前髪をかき上げると、スマホを手に取り耳に当てた。

「そちらはどうだ?ああ、誠くんはもう寝たよ。うん、わかった。こちらは問題ないから気にするな」

電話はすぐに切れた。恐らく渡辺さんからだろう。咲さんは大丈夫なのかな?

なんて味気ない会話なんだろうと思いながら、クールな彼の横顔を見ていたらそれは仕方のないことだと納得する。

彼が視線だけ私に向ける。

目が合った途端、さっきの状況を不覚にも思い出し顔が熱くなった。

私は直ぐに目を逸らすと平静を装いつつ尋ねる。

「咲さんは大丈夫ですか?」

彼はスマホをズボンのポケットにしまうと、ダイニングの椅子に腰を下ろし足を組んだ。

「病院についてすぐ分娩室に入ったらしいが、二人目だというのになかなかの難産らしい」

「そうなんですね」

「渡辺がこちらに戻るのは早朝になるかもしれないな」

「はい……」

「俺はここで起きて待ってるから、お前はソファーで寝てて構わない」

「いや、でもそれは……私もここで起きて待ってます。どうせ寝れないと思うし」

無表情だけど、結構優しいことを言ってくれる彼に正直どう反応すればいいかわからずそう返した。

「そうか?眠たくなったら俺に構わず寝てくれ」

「はい……」

いつの間にか午前十二時を回っていた。

何もない田舎の夜は、怖いくらいに静かだ。

普段いかに喧騒の中で生きてるかを思い知らされる。