大きなダブルベッドの横に小さめのベッド。

その上にうっすらと小さな誰かが寝ている影が映っている。

きっと誠くんだ。

そしてそのベッドの横に大きなもう一つの影がこんもりと見えた。

次第に暗闇に目が慣れてその姿がはっきりとしてくる。

寝かしつけながらそのまま寝てしまったのか、彼が誠くんのベッドにつっぷしていた。

静かに彼のそばに近寄っていく。

近づくと月明かりに白く照らされた彼の横顔が見えた。

きっと疲れ果てて一緒に寝てしまったんだろう。

長いまつ毛、形のいい鼻と口元は微動だにしない。これだけ至近距離で凝視しても、やはり逃れようもないきれいな顔。

黙ってればものすごいイケメンなのに。もう少し私にも優しくしてくれたら……。

いやいや、きっとこの顔で優しくなんかされたら完全に好きになっちゃうよね。

到底不釣り合いな相手だし、仕事相手を好きになるなんて超御法度だ!

私は一人首をぶんぶん横に振り、気持ちを整えると彼の横で静かに寝息を立てている誠くんの布団をゆっくりと持ち上げ肩までかけた。

「ん……」

彼が小さく声を漏らす。

あ、起こしちゃった?

慌てて布団を掴んでいた手を離し彼の顔を恐る恐る覗き込むと、微かに目元がピクンと動き眉間に皺が寄る。

そして、組んでいた手の片方がこちらに伸びてきた。

え?何?寝ぼけてる?それとも起きてる?

「……こっちへ来い」

そう言ったような気がした。

はっきりとは聞き取れなかったけれど、様子を伺いながら彼の方に近づく。

伸ばされた手が何かを探すかのように宙を探っていた。

なんだかわからないけれど、その手を掴んだ方がいいような気がして両手でつかんでみる。

暖かくて大きな手が私の手をぎゅっと握り返した。

嘘、何これ。

急速に私の心臓が動き出す。

薄暗いベッドルームで彼に手を握られているこのシチュエーション。

バクバクと激しく鼓動を強める心臓が今にも口から飛び出そうだ。