5.俺としたことが……

俺としたことが、あんな訳のわからない小娘を自分の家に入れてしまった。

なんてことだ。

マスメディア関係者とは一切関わらないようあれほど気を付けていたはずなのに。

【藤 都】などという地方の演歌歌手みたいな名前の割に女らしさとは全く無縁。しかも、一途過ぎる頑固な物言いと強い眼光を放つネコみたいな大きな瞳はどうも苦手だ。

強情さを上回る正義感が一層やっかいさを増している。

とりあえず、これからバスルームを使うであろう彼女のためにバスタオルを置いてやり、俺はベッドルームに向かう。

いつもより熱めのシャワーを浴びながら、俺はこの二日間の出来事を回想していた。

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あれは確か昨日の昼前。

Frozun food事業部営業グループの山川哲人の件で、その上司である営業部長の内山から相談を受けていた。

山川がどうもうちの営業情報を競合他社にリークしているらしいと。

元々入社後すぐに営業トップの成績で頭角を現していた奴だが、かなりの女好きでうちの秘書である米倉 菜月(よねくら なつき)にも最近よくちょっかいをかけてくるらしく、どうしたものかと秘書室長が頭を悩ませていることは知っていた。

部下のプライベートや恋愛事情にまで立ち入ることはできないと思っていたが、その相手が他社に情報をリークするような人間であれば話は別だ。

一度山川を呼び出し、くぎを刺しておく必要がある。

相手の態度如何では転勤や出向も考えなければならない。

遠回しに聞くのが嫌いな俺は、呼び出した山川に率直にリークの件を尋ねることにした。

山川も頭の切れる奴で、俺の性格上正直に言わないとまずいと思ったのか意外とあっさり認める。

リーク内容自体は幸い会社では重要視すべき内容ではなかったが、リークした事実はやはり一種の会社への裏切り行為だと伝え十分反省して出向先で一から出直すよう伝えた。