「その条件、呑ませて頂きます!」

意表をつかれたかのように彼の眉がピクンと上がる。その表情に今立場が逆転したことを感じていた。

「お前、本気で言ってるのか?」

「本気です!」

「彼氏でもないような男と仕事の時だけでなく、昼夜問わず生活を共にしろと言ってるんだぞ?」

「わかってます!」

「いや、わかってないな。俺がどういう男かも知りもしないで」

彼は顎に手をやり、挑発するような視線を私に向けてくる。

敵もそう簡単には引き下がらない。

「今、私はどんな条件であっても、この依頼を引き受けて頂けたらそれでいいんです!」

更に一歩近づき、190近くもある彼の顔を見上げその美しくも冷淡な瞳をしっかりと捉えた。

彼と私の隙間はわずか20㎝あるかないかだ。

「お前をそこまで突き動かすものは一体何なんだ?」

小さく呟いた彼は私を見つめたまま長いため息をつく。そして、襟元を正すと私から視線を背けあきらめたような口調で言った。

「好きにしろ」

彼は眉間に深い皺を寄せたままゆっくりと私に背を向け歩き出した。

「はい!好きにさせて頂きます!」

地面に倒れていた自分のバッグを胸に抱え急いで彼の後を追いかける。


まさか、こんなことになるなんて誰もが想像もしていなかった。

そして、その時から自分の運命の歯車が大きく動き出すってことも知るよしもない。