全くその通りだった。

編集長、副編集長、坂東さん、由美……チームの思いや力が終結して一冊の雑誌が生み出される。

私たちは、表面的なことだけではなくて、もっと奥深くに息づくものを掘り下げ、そしてその思いを読者に届けなくちゃならないんだ。

「編集って、深いですね」

私は雑誌を閉じると、小さな声で言った。

「これからも期待してるわよ」

そう言った山根さんは眼鏡を上げると、口角を上げて私に頷く。

「はい、がんばります!」

「それから、例の太東出版の件だけど、本当にいいのね?」

ああ、そうだった。

礼さんは、あのたぐいの雑誌は最も忌み嫌っていたから、例え私たちが結婚したという事実であったとしても掲載させたくないと頑なだった。

だけど、太東出版もきっと私たちのチームがそうであったように必死にこの世界に生き抜いてる。

極小さい枠で、私たちが結婚したという事実だけ掲載してもらうくらいならそれほどリスクはないはずだと彼を何とか説得した。

もちろん、他社にはトップシークレット。小さい記事だけどスクープ記事として掲載すれば太東出版にも多少なりとも利益はあるはずだから。

「お前みたいなお人好しは知らない。そのうち足元すくわれるぞ」

そう言って、彼は渋々頷いてくれたのだった。

「昨晩、太東出版の渡辺さんから電話があってくれぐれも都によろしくとのことだったわ」

「もともと私の迂闊な行動に原因があったからですし、大変なのはお互い様だなって」

「まぁ、どんな書き方されるかはわからないけれど最終結婚したんならそんな悪い記事にはならないかしらね。でも、これでわかったでしょう?くれぐれも自分の行動には責任を持つこと」

「はい。耳が痛いです。私ってばそんなことばかりで皆さんに気をもませてばかりですよね」

そう言った直後、山根さんと顔を見合わせ同時に吹き出した。