「ありがとうございます」

そんな風にほめてくれた二人に素直に礼を言うと、気を取り直してパソコンを立ち上げる。

こんな場所で項垂れてたって何の解決策も浮かばないわ。

次号の企画書を作成しようとしたその時。

「都、ちょっといい?」

山根さんは私に向かって手を挙げると、手帳を持って会議室に向かった。

え?なになに?

突然の呼び出しに戸惑いつつも、慌てて腰を上げ会議室に続く。

山根さんとデスクを挟んだ正面の席にドキドキしながら座った。

一体なんだろう?

まさか……まさか山根さんの耳にも私と彼のことが入ったってことはないよね?

山根さんは首にかけた眼鏡をつけると、手帳を広げた。

「えーっと、まずは今回は本当にお疲れさま!」

想像していなかったまさかの笑顔をいきなり向けられ、慌てて頭を下げる。

「錦小路社長からの記事をとったのは、どこの出版社もなしえなかった偉業よ。想像以上の反響に私自身も驚いてる。都の底力をようやく発揮したって感じね。これからも期待してるわよ」

「いえ、皆さんのお力添えがあったからで私だけの力ではないです。勝手なまねばかりの私を編集長にはいつもサポートして頂いて感謝しています」

「周囲のサポートを得る力もあなたの実力の一つよ」

編集長は優しく微笑み私の目をまっすぐ見つめ頷いた。

サポートを得るのも実力?

「あなたのそのまっすぐな思いが周囲を動かすの。きっと錦小路社長も同じだったと思うわ。それは、一種の生まれ持った天性というか人徳だわ。誰でもができることじゃない」

「そんな……」

目の奥がきゅうっと熱くなる。

そんなことないのに。皆が優しくて愛にあふれてるだけだ。

それに、私はとても大きな失敗をしたというのに。

取材相手に恋をしてしまうなんて……。