澪さんはもうすぐ三十歳なんだ。

年齢の割にとても若く見えた。きっとあの天真爛漫な性格が更に若く見えさせてるのかもしれない。

でも、私は彼女みたいなタイプは嫌いじゃない。むしろもっと話してみたくなる。

一人でヨーロッパに行っちゃうなんて、かつて私もそうだったもの。

「ほら、おいしいワインお土産に買ってきたのよ。三人で一緒に飲みましょ!」

澪さんはキッチンからワインを持ってきた。

「今さっきうまいワインは飲んできたんだけどな」

彼は席につくと軽く息を吐いた。

「礼さんも久しぶりの再会なんでしょう?私も澪さんにお会いできて嬉しいし、ゆっくりお話伺いたいです」

「都ちゃん、いい人ね。そうこなくっちゃ!礼兄ちゃん、こんなかわいらしい彼女ができてよかったわね。これで私も安心してお嫁に行けるわ」

そう言うと、澪さんは子気味のいい音を響かせてワインのコルクを抜く。

「ん?お嫁?」

彼は澪さんの方に視線を向け右眉をピクンと上げた。

「お嫁にいけるって、どういうことだ?」

「ふふ。まずはワインで乾杯してからゆっくりとー」

悪戯っ子のような表情で私に舌をぺろっと出すと、三人のグラスにワインを注いでいく。

「都ちゃんに今日出会えたことに乾杯!」

彼女は明るく笑うと、私のグラスに自分のグラスを合わせた。

「ったく」

彼は訝し気な目で澪さんを見ながらグラスを合わせる。

彼女の買ってきたワインはフランス産の白で辛口だけど後味がすっきりしていてとてもおいしい。これなら、食事の後でも軽く数杯はいけそうだ。

ワインのチョイスが上手なのもきっと彼と兄妹だからなんだと妙に納得する。

私は礼さんのこと、妹さんがいるということ以外実はまだ何も知らない。

聞こうにもなんとなく聞きづらくて、彼が自分から話してくれるまで待つつもりでいたんだけど、澪さんなら色々話してくれそうだ。