カメラマンの松下さんですら、この目にやられてるんだもの。

私だけじゃなく、誰でもこんな目で見つめられたら冷静でいられなくなる。

「は…い」

小さく頷くと、彼が私の耳元でささやいた。

「明日は休みだろう?今夜は前以上に愛ってものの奥深さをじっくり教えてやるよ」

「な、なんですか!そんなこと結構ですからっ!」

自分の顔が真っ赤になっているのがわかる。

こんな風になるのをわかってて彼はわざとそんなドキドキするようなこと言うんだ。

「じゃ、このまま都の家まで送ろうか?」

ニヤッと笑った彼は私の肩をポンポンと叩く。

「錦小路社長は本当に意地悪です」

私は彼からプイと顔を背けた。これ以上目を合わせられなかったっていうのもあるけど。

「おい、まだ俺のこと錦小路社長って呼ぶ気か?俺のこと礼って呼ぶならもうこれ以上意地悪なことは言わないと約束する」

「れ、れい??」

思わず大きな声が出た。

彼みたいなすごい社長のことを下の名前で呼ぶなんて?

そんなことできるはずもない。

「呼ばないならこれからもお前の困るようなこといっぱい言ってやる」

いや、それは困る。今でも十分困ってるんだから。

「じゃ、あの……れ、礼さん……これでいいでしょうか?」

「聞こえなかったな、もっと大きな声で俺を見て言えよ」

私は思い切って視線を上げ彼と目を合わせた。

至近距離の美しい顔はやっぱり何度見ても恥ずかしくなる。

「礼さん」

「それでよし。これからは俺のこと社長なんて絶対呼ぶな」

「はい、がんばります」

礼さんはようやく優しく微笑むと、私の頭を優しく撫でた。

どう考えても遊ばれてるようね。

だけど、こんな会話のやりとりも今はとても心地いい。

彼は店員を呼ぶと支払いを済ませ、私達はレストランを後にした。