「はいはい、都をからかうのはそこまで!」

編集長は絶妙のタイミングで手を二度叩き皆を自分の方に集中させた。

あー、よかった。どこまで引っ張られるのかひやひやしたわ。

基本嘘がつけない私はそういう話題で的になるのが苦手だ。

まぁ、結婚なんてあるはずないだろうけれど……。

山根さんは背筋を正し、軽く咳ばらいをすると言った。

「昨晩、校了が済んだことを田丸編集部長に報告したの」

「錦小路社長のことも報告されたんですか?」

坂東さんがコーヒーカップを手に持ったまま前のめりに尋ねる。

「ええ。部長は目を丸くして思わず立ち上がって驚いてたわ」

「ああ、まさかあんなに頑なな錦小路社長が大手を差し置いてGO!GO!出版社の雑誌に載ってくれるとは信じられないってね」

川西副編集長も腕を組みまんざらでもない表情で付け加えた。

「JOB♡JHOSHI!の休刊は免れそうですか?」

私は恐る恐る尋ねる。

山根さんは口元を緩るめるも頷かない。

「とりあえず出版されたその後の売り上げが大事。そして、その後もしばらくね。だから、今回の号に甘んじることなく次の号もたくさんの読者に面白いと思ってもらえる記事を考なくちゃならないわ」

「そうですよね。ここで甘んじっちゃ私たち編集部の名が廃るわよね!」

坂東さんも大きく頷き編集長に賛同する。

「休刊うんぬんよりも、私たちの雑誌が次号もその次の号も更にレベルアップしていくことが大事。これまでの枠に捕らわれず新しい企画があればどんどん上げて。これからももっとJOB♡JHOSHI!を盛り上げていきましょう」

「はい」

私はしっかりと編集長と目を合わせて答えた。そう、彼も言っていたけれど変わっていくことも大事なんだ。