たとえばあなたのその目やその手とか~不釣り合すぎる恋の行方~

備えられているポットとインスタントコーヒーに気づき、彼に入れましょうかと尋ねると彼は「頼む」と答えた。

冷蔵庫にあったミネラルウォーターをポットに入れ、湯を沸かす。

静かな部屋にぽくぽくと沸騰しはじめるポットの音が響いた。

窓の方に顔を向け座っている彼は何も言わない。

こんな狭い空間で二人きりだっていうのに、こんなに静かだとなんだか気まずい。

彼が目を向けている窓の向こうには、白い山脈に傾いた日の光が当たってとても幻想的だった。

あの山を見ながら、彼は今何を考えてるんだろう。

この場所に二人で一晩過ごすことになってしまったことに後悔の嵐なんじゃないかしら。

彼と一緒にこんな遠くまで来てそばにいることが、いつの間にか不自然でなくなっている自分自身がとても厚かましく感じる。

いや、本当は厚かましいなんて感じてはいない。感じなくちゃいけないって思うだけだ。

何か話さなくちゃと思っていたら、いいタイミングで湯が沸いた。

インスタントのコーヒーの袋を破り、カップに湯をゆっくりと注ぐ。

途端に部屋にコーヒーの香ばしい匂いが広がり、二人きりの部屋の張りつめた空気が少し緩んだ。

彼の座る前の丸テーブルにコーヒーカップを置く。

私は自分のカップを持って、ひじ掛け椅子には座らずベッドの端に腰掛けた。

「お前もここに座って飲めば?」

彼は、ベッドに座った私にそう言うと、テーブルを挟んだ先にある椅子を指さす。