パシッと蒼の手を振り払って、首を横に振った。
「クマくんは…蒼みたいに遊んでないもん!」
「だから経験が少なくて、お前も満足出来ねーんじゃねーの?」
「満足してるよ!」
いっぱい『好き』って言ってくれて。
たしかにクマくんのキスはぎこちないけど、それが愛しいんだよ。
「……蒼にはわかんないよ」
「……なにが」
「好きな人もいない蒼には、わかんないよ!」
フイッと顔を背け、蒼を置いて歩き出そうとしたら。
急に片手で頰を掴んできて、無理やり顔を蒼の方へ向かされる。
「…ひゃにふふほ(なにするの)!」
頰を押し潰されているので、上手く話せない。
目の前にいる蒼は、そんな私を見て笑うでもなく、
むしろものすごい不機嫌な顔で私を見下ろしていた。



