好きになってはいけません。




「……もっかい蹴ってやろうか?」


「物騒だな」


「誰のせいだ!!」



髪で耳を隠すと、


蒼がスリスリと私の頭に頰を擦り付けてきた。



「もう!なに!?」


「………」



何も言わない蒼。


そしたら、今度は私の頭を撫でてくる。



……すごく、優しい手つきで。



「あ…あお…」


「あー!
蒼イチャつきすぎだろ!」



少し離れたところから聞こえた声に、ビクッとして。


賑やかすぎて見られてないと思ってたけど、見られてることに気付いて顔が真っ赤に染まっていった。



「柚ちゃん真っ赤!
蒼のこと好きになっちゃった?」


「ち、ちが…!!」


「じゃあここはカップル成立ってことで、
お先に失礼するわ」



ニコッと笑った蒼はそう言って、テーブルにお金を置き、私の手を引いて部屋を出て行く。