唇をつーっとなぞられて、逃げるように顎をひいた。
でも、蒼の手が強引に私の顎を掴んで。
視線だけ上に向けると、ものすごい整った顔と目が合う。
清潔そうな黒髪とは裏腹に、髪の隙間から覗く耳にはピアスがついてる。
それが見えた瞬間、咄嗟に“やばい”って感じて。
私の脚が、蒼の股を蹴り上げた。
「…〜〜〜っ!!!!」
その瞬間、蒼の顔が一気に青ざめて。
あまりの痛みからか、その場にうずくまった。
「……なに、しやがる…っ」
「……あ、蒼が悪いんでしょ!?」
手加減したつもりだけど…相当痛がってる。
やりすぎちゃったかなって思ったけど…あのままだったら私がどうにかされるとこだった。
持ち帰るとか言ってる奴だもん。これくらいした方がいいよね。
ちょっと申し訳ないとも思ったけど、うずくまったままの蒼を放置してその場を離れた。