電車に揺られている間、


さっきのことを思い出して、『あ、』と声を出してしまった。



「柚、どうかした?」


「え…っ、いや、なんでも!」



クマくんにあはは、と笑ってから、窓の外に目をやった。



……蒼、なんで今日いなかったんだろう。



海から帰って来たあの日から、蒼とは全く話してない。


今までと同じように、駅のホームで見かけるだけ。


女の子と一緒なのも、今まで通り。



私は、あの日から蒼をまた好きだと自覚した。


……でも蒼にとって、あの海に行った日はなんでもない日だったのかな。


蒼はなにも変わってない。


私だけが、特別に思ってたんだな…。