好きになってはいけません。




狭い店内に、甲高い女の人の声が響く。


その方向を見なくてもわかる。黒髪ロング女子の声だろう。


あーあ…あの子ミスしちゃったのかな…。



チラッと指の隙間から覗くと、店員の女の子が床にしゃがんで割れてしまったグラスを片付けていて。


ヒステリックのように叫ぶ女の人は、その店員さんの手を踏みつけ、かかとでグリグリと床に押し付けていた。



「……!!」



……ひどい。


ハッと顔を上げて、蒼の方を見ると、


呆れたように頬杖をついて黙っているだけ…。



……ひどい。ひどいよ、蒼。


どうして平気な顔をしているの?



……蒼…





そんな人だと、思いたくなかった。