男性の言っていることが理解できず、美砂は首を傾げる。すると、男性は美砂に杖を向けた。

「キアーヴェ!」

男性が何か呪文のようなものを叫んでも、美砂に光線が飛んでくるといったことはない。何も起きていないのだ。

「えっと……私、忙しいのでこれで……」

厨二病の人なのか。そう思いながら美砂が男性の横を通り過ぎようとした刹那、ガシャンと目の前に鉄でできた柵が落ちてきた。

「ひっ!」

美砂は後ずさるが、その背中にもヒヤリと冷たい鉄が触れる。美砂は一瞬で巨大な檻の中に閉じ込められてしまったのだ。

「な、何これ!!どうなってるの!?」

混乱する美砂を鬱陶しげに男性は見つめる。そして、また美砂に杖を向けた。

「シュラーフェン!」

男性が呪文を唱えた刹那、美砂を強力な睡魔が襲う。美砂は抗うこともできず、意識を失った。



美砂が目を覚ますと、まだ狭い檻の中に閉じ込められていた。さらに首輪と手錠までつけられている。

「何これ!外れない!」

首輪と手錠はつながっており、美砂がどれだけ力を込めて引っ張ってもびくともしなかった。