「す、すみません!大丈夫ですか!?」

道には美砂の教科書や筆記用具などが散乱している。しかし、まずは相手に謝らなければと美砂は目の前を見て固まった。

美砂がぶつかった相手は、黒いローブを着て木の枝でできた杖を握っていた。ファンタジー映画に登場する魔法使いのような格好だ。しかし、今はハロウィンではない。

「あの……お怪我はありませんか?コスプレすごく凝ってますね。衣装、汚れちゃいましたか?」

美砂は戸惑いながらもぶつかった相手に声をかける。怖い人だったらどうしよう。クリーニング代は出した方がいいのかな。遅刻の不安は消え、新たな不安が美砂の中に生まれる。

「いや、その心配はない」

顔を上げたその人は男性だった。金髪に赤い目と日本人離れしている。しかし、この時美砂はまだ外国の人がコスプレをしているんだとしか思っていなかった。

「最近いい商品が見つからなかったんだが、たった今見つかったよ」

「へ?え、えっと……」