本当だって良いと思えないの
アタシはまだ弱い虫
コントラクト会議
アタシはまた君の中に堕ちていくの


心の中では、あの時のように歌えている。でもあたしの喉は音を発さない。もう声を失って一年ほど経っている。

「ひなみ、ご飯作ってくれてありがと。食べようか」

着替え終わった伊久巳さんがあたしの頭を撫でる。あたしはニコリと微笑み、作った朝ご飯をテーブルの上に並べた。



歌い手という存在を知ったのは、十五歳になった頃だった。

あたしは常に孤独だった。母は他に男を作って出て行き、父は母にそっくりなあたしをいないものとして扱った。だから、授業参観や運動会に家族が来てくれることはなく、それが原因で「親に捨てられた子」と言われていじめられた。

愛されない。必要とされない。そんなあたしを救ってくれていたのは、音楽だけだった。ボカロに洋楽、アニソンなど様々なジャンルの音楽に助けられてきた。

高校は、冷たい環境から逃れようと思い切って上京した。おしゃれなどを頑張り、友達もできた頃に知ったんだよね。