「今後、創作フレンチも取り入れて行けたら良いなと思って、視察も兼ねて行ってみたんだけど…恵里奈が喜んでくれたから連れて来たかいがあったな」

「一颯さんはお休みの日も仕事目線ですね。私はずぅーっと前から気付いてましたよ!ランチも視察を兼ねてですよね。
私はレストランも一颯さんの事もちゃぁーんと見てましたよ」

「御明答。俺も恵里奈を見てるよ。ほら、また転びそうになるから…!」

何にもない場所で足がもたつき転びそうになった為、一颯さんに助けられた。私は繋いでいた手を離して一颯さんの腕に絡みついた。

一颯さんは隣で歩く私の歩幅に合わせてゆっくりと歩いてくれている。駐車場まで後わずかの距離。この幸せな時間が終わって欲しくない。時間が止まってしまえば良いのに……。

「こんなに幸せでどうにかなってしまいそうです」

「恵里奈が幸せになれるなら、毎週でも外に連れ出してあげたいって言いたいところだけど…」

駐車場に着いた時に車の前で伝えた言葉に対して、一颯さんは言葉を濁す。

「バトラーの仕事が始まったら今よりも忙しくなると思うから…そうもいかなくなるな」と言われて、車に乗せられた私。