本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~

「一颯さんも初めから言ってくれたら良かったのに!」

「だーかーらー、恵里奈に受け入れられなかったらって思ったら言えなかったんだって!」

「いつもは強引なのに、こんな事は躊躇するんですね」と言って私が笑いながら話すと一颯さんは「…っるさい!」と言って頬が赤くなった。

少しずつだけれども、一颯さんの事を知れて嬉しい。

二人の好きなバンドの曲を流しながらのドライブはとても新鮮。

そう言えば、彼氏の車に乗せてもらうなんて事が今までなかった。元カレは同じホテルで働いて居たけれど、車なんて持ってなかった。

一颯さんは年上で上司、同期だった元カレとは年齢も立場も違うし、何より顔立ちが綺麗で聡明な男性。

思い返して見れば一颯さんとお付き合いしている事は、私にとっては好条件過ぎて奇跡に近い。一生に一度、運命の人に会えるのだとしたら一颯さんが良い。今はもう、他の誰かじゃなくて、一颯さんじゃなきゃ…駄目なんだ。

一颯さんと結婚出来たら毎晩、料理を作って帰って来るのを待って、一颯さん似のイケメンな男の子が産まれちゃったりして…、子供が産まれても私の事も忘れずに大切にしてくれて、それから……。

「恵里奈、もうすぐ着く。降りる準備して」

「……は、はいっ!」

「……っぷ、何でニヤついてるの?」

「に、ニヤついてなんていません!」

去り行く景色を見ながらの妄想が広がりすぎて、顔に出ていたらしい。そんな私を横目で見た一颯さんが吹き出した。

「お前は本当に見てて飽きないよ」

「けなしてるんですか?」

「けなしてるんじゃなくて見てて可愛いから飽きないって言ってるんだよ」

声を出して笑っている一颯さんにつられて、私も笑う。一颯さんは職場ではあまり笑わないから、私の前では自然体で居てくれて嬉しい。

冷酷、鬼軍曹、仕事の鬼とか色々言われているけれど、本当の一颯さんは強引なくせに指摘されると照れてしまう可愛い一面がある。私はそのギャップが凄く好きなのだ。