「そんなに喜んでくれるなら、作りがいがあるな」

オムレツを前にキラキラと目を輝かせてしまった私に対して、支配人はクスクスと笑う。きっと子供っぽい、と感じて笑ったのだろう。

それじゃ駄目なのに!…でも、目の前の美味しい誘惑には勝てません。

「美味しいです、とっても。私なんかより、料理が上手ですね。支配人って器用に何でもこなしますよね?」

「一人暮らしが長いからな。…器用貧乏で何でも自分でやってしまうから、30を過ぎた今も独り身だ」

否定しないところが、自信家の支配人らしい。

「……最近は忙しくて、女の影もないから、見合いを進められてもいるが気乗りしない」

女の影はないって、やっぱり私の事は範疇にないのか、ポメラニアンの依子ちゃんと同じようにペットとして可愛がっているだけなのか…。

本気で相手にされてないのが浮き彫りにされたようで、イラッとして反抗してしまう。

「まぁ、さぞかし、おモテになるでしょうからね…。お見合いなんてしなくても、その気になれば沢山寄って来ますよね!」

お皿を見ながら、ムスッとした顔でイライラをぶつけてしまう。

その後、チラリと支配人を見た時に目が合い、

「…そうだな。適度には寄って来るが、肝心な女はどっちつかずで、弄ばれてるとしか思えないんだが…。なぁ、篠宮?」

と言って見つめられる。

「し、知りません、そんな事!誰の事を言ってるのかも知らないし!」

ムキになり、焦りながら否定をしてしまう。

「…ふうん?まぁ、いいや。ゆっくりと時間をかけて落とすから」