本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~

担当のお客様にシャンパンをお届けし、グラスに注いでいた時に話をかけられた。

「お隣のスイートにお泊まりの方は一条様でしょ?」

「申し訳ございませんが、個人情報保護の為にお伝えは出来かねます」

「そうよね……。先程、お見かけした時に国内の有名ホテルを経営する一族の娘、一条 園美だと思ったのだけれども……」

お客様は私にそう伝えるとシャンパンを一口含んだ。

「お知り合いの一条様は高貴なお方なんですね」

「あはは、お知り合いじゃないわよ!有名企業が集まるパーティーで少し話をしただけの顔見知り程度よ。次期、社長と噂されてるわね」

一条様は有名ホテルの経営者の娘さんだったとは。その繋がりで一颯さんを知っていて大切なお客様だとしたら、納得がいった。

担当のお客様にルームサービスのフレンチのコースを出し終わり、仕事は一段落。今日の仕事は一条様の他は難なくクリア。エグゼクティブフロアの窓から見える夜景が疲れた身体に癒しを与える。

エグゼクティブフロアの裏にある、専用の待機室兼休憩室に立ち寄り、自動販売機からカフェオレを購入して椅子に座った。

そこには先約が居て、一段落ついたエグゼクティブフロアの従業員が集まっていた。

「篠宮ちゃん、スイーツ食べて良いんだって。食べよー」

「わぁ!有難う御座いますっ」

私を見つけて話をかけてくれたのは、エグゼクティブフロアのラウンジ担当の吉沢 陽(よしざわ はる)さん。歳は一つ上だが、仲良くしてくれる。エグゼクティブフロアに出入りするようになってからは皆が平等に働いていて、上下関係はあるものの居づらさは感じない。