本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~

「お疲れ様」

準備をしていた時、一颯さんが製氷機の前まで来て会ってしまったのだった。

「……お疲れ様です。またまた御迷惑をおかけしてしまいました。申し訳ありませんでした…」

深々と礼をして謝った。心の準備も出来ていなかったのに会ってしまい、内心はドキドキしている。一颯さんもシャンパンの準備をしに来たみたいで、シャンパンクーラーにクラッシュアイスを入れ始めた。

「何が?」

「……私が英語で話したから一条様の御機嫌を損ねてしまったようで」

「んー?全然、大した事じゃない」

一颯さんは平然な顔をしながら、準備を淡々としている。

「いぶき…いや、支配人がスムーズに英語で会話していて格好良かったです」

「惚れ直したか?」

「………はい」

冗談を言い、私に微笑んでくれた。近くには誰も居ないので、一颯さんは普段通りに接してくれる。本当は格好良過ぎて、キャーキャー言って騒ぎたいし誰かに伝えたいけれど……それは自粛。

「それよりも、篠宮が想像よりも英語を上手く話せていて驚いた。やっぱり俺の目に狂いはなかったな?」

「……そうでもないです。私はやっぱり駄目な部下です」

私は下を向いて、しゅんとした態度をとった。

「そうか?一条様に対しての件を気にしてるなら、大バカだな。済んでしまった事は仕方ないし、お前が思ってる程、事態は深刻ではない」

「そうですかね、そうは思いませんが…。接近禁止と言われましたし…」

「その判断は高見沢がしただけで、一条様が指定した訳ではない。一条様の担当者は俺であって、篠宮じゃない。……だから、もう気にするな」

手を伸ばして、頭を優しくなでなでされた。

「ほら、氷が溶けるから早く行きなさい!長居しすぎ!」

「わぁ、そうでした!行ってきます!」

私は一颯さんとのやり取りに時間を費やしてしまい、シャンパンクーラーの中のアイスが溶け始めていた。