本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~

「……あんたさぁ、めちゃくちゃ面白いじゃん!一条様にケンカ売った人を初めて見たよ」

食べ終わったアフターヌーンティーの食器を高見沢さんが下膳して来たので、一緒に片付けていると笑いながら言って来た。

「ケンカ…と言いますと?」

「一条様って、英語で会話したりするでしょ?あんたには日本語だったから英語で返さなくて良かったのに…、まさか英語で返しちゃうなんてね。どんだけ、強者なの?」

「……いや、あの…、皆が英語で会話していたので…、日本語禁止みたいな授業のノリでついつい返してしまいました」

「そうなんだ。一条様って、基本は女性スタッフが何をしても無関心だけどあんたの対応は気に触ったみたい。そんな対応を取ったから、一条様の御機嫌をなだめるのに一颯君は苦労してるよ?あんたはもう下手に近付けさせられないからね、一条様の部屋には行かせない」

「………はい」

私の勝手な判断で一颯さんにも御迷惑をおかけしてしまったらしい。あれ程、軽率な行動は控えると誓ったのに。

「……でもね、一颯君も笑いを堪えてたよ。今まで、一条様には誰も逆らわなかったからね」

「……重ね重ね、すみません」

「いいよ、別に。一条様の言いなりになるだけが接客の全てではないから。ホテルにとって一条様は大切なお客様ではあるけれど、我儘の度合いが酷くなって、更には従業員が傷付けられる事にでもなったら…それこそ埒が明かないから。一条様がどう出るかによっては、一颯君も考えなくてはならないお客様だと思うよ」

高見沢さんが親身になって考えてくれている。口は悪いが、こういうところが高見沢さんの良いところだ。それに何だか…、何時になく優しい。通常ならば、叱りつけてデコピン位はされるのに。環境の変化でもあったのだろうか?

「とにかく、一条様の部屋には接近禁止ね」

「はい、大変申し訳ありませんでした…」

高見沢さんは優しくなだめてくれたけれど、私は自分が許せない。またしても、一颯さんや高見沢さんに御迷惑をかけてしまった。私は使い終わった食器等を洗い場に送り込む準備をしながら、大きな溜め息をついた。

その後は担当のロイヤル2の御要望の準備をし始めた。クラッシュアイス(細かい氷)をシャンパンクーラーの中に入れながら、一颯さんにどんな顔をして会えば良いのかと考えていた。