クリニックの準備も、順調に進んでいた。


11月に結婚式を挙げ、新婚旅行から 戻るタイミングで 廣澤クリニックが オープンする段取りを整えた。
 

「全部、奈緒任せで ごめんね。」

翔が家に戻ると 細々したことを 奈緒が報告してくれる。

奈緒は ニヤッと笑うと、
 

「待合室のソファ、ちょっと良いのに しちゃった。」

と翔に言う。


翔が 明細を見ると、予算より高い 一流メーカーの ソファが記入されていた。
 

「コラッ。無駄使いして。」


翔が 奈緒の頭を小突くと、奈緒は首をすくめて
 


「だって。絵里ちゃんと恭子ちゃんが、絶対に こっちの方が良いって言うんだもん。」

奈緒は笑顔で答える。
 

「あの二人は、将来の社長夫人なんだからね。奈緒まで真似して 贅沢したら駄目だよ。」

と翔が言うと、奈緒はケラケラ笑う。



「あっ。ケンケンと絵里ちゃんが 待合室に飾る絵を プレゼントしてくれるって。」


奈緒が言うと、
 


「資産価値が 上がりそうなのを リクエストしてよ、奈緒。」



と翔も笑った。