樹が勧めてくれた物件で、開業を決めた翔と奈緒。

それからの日々は、驚くほど 忙しかった。
 


二人はまず、入籍をした。

そして奈緒は、翔よりも 一足先に医局を出て 非常勤の医師になった。



開業に係る 全ての手続きを、奈緒は 勤務の合間にこなした。
 


同時進行で、結婚式の準備も 進めなければならない。


開業すれば、大学病院とのパイプは 重要になってくる。

医局を出るからと 大学病院を 蔑ろにすることは できなかった。
 


父の会社関係だけでも 招待客の数は 相当なのに。

医師の関係者を合わせると 樹の時よりも 招待客は多くなってしまう。
 


「こんなに人がいたら 私達 見えないですよね。」

休日になると実家を訪ね、両親と 結婚式の 打合せを重ねる奈緒。
 

「いいじゃない、その方が 緊張しなくて。」

と母に笑われて、
 

「そうか。それもそうですね。」

と頷く奈緒を、父と母は笑う。