「ねえ、奈緒は 何で医師になったの?」

実家から帰って来て 翔と奈緒は ゆっくり話していた。


翌日、樹と一緒に テナントの物件を 見に行くことになっていた。
 


「昔ね、小学生の頃。私 開業医の子と 仲が良かったの。家の一角が 診察室になっているような 町医者なんだけど。」

そう言って奈緒は 恥ずかしそうに 翔を見た。
 

「その子ね、いつも新しいおもちゃ たくさん持っていて。誕生会に行くと 豪華なお料理や 大きなケーキがあって。私、すごく憧れたの。」

奈緒の言葉に、

「それで 医師になったの?医師と結婚すれば済むじゃない。」


翔は驚いて、笑いながら答える。

奈緒は ハッとした表情で、
 

「そういう風に考えたこと、全然 なかった。」

と呟いた。翔は声を上げて笑う。