翔も 思いがけない展開に 戸惑いが隠せない。
 


「樹に言われて 周囲を リサーチしてみたけど クリニックには 適していると思う。開業を決めてからから 場所を探しても なかなか 見つからないこともあるからね。二人で見て 気に入れば 決め時だよ。」

父は、翔と奈緒を見て言う。


優秀な経営者は決断が早い。
 


「何でもそうだけど。あなた達、動かないから。どんどん お膳立てしちゃうわよ。」

と母は笑う。
 


テナントを借りてでも クリニックを開業するとなれば、億に近い 資金が必要になるだろう。

両親も樹も、タクシー代を立替えるような気軽さで 資金は用意すると言った。
 

自分の家が特別だと 翔は ずっと思っていたけれど。

それでも やっぱり驚いてしまう。


一体、うちには どれほどの 財産があるのだろうと。



しかもそれを 躊躇いもなく 翔の為に 使おうとしている。
 


母が言った “ 家族のお金だから、みんなで使えばいい ” という言葉に、翔は感動していた。



それなら、自分も医師として クリニックを成功させ 、廣澤家の財産を増やしたいと 翔は思っていた。