「仲良いね。」

と樹は笑った後で、
 
「翔達の家、建てるつもりだったから。先に開業して 儲かったら 自分で建てなよ。」

と続けた。


奈緒は戸惑って、母の顔を見る。
 

「大学病院の先生もいいけど。家庭を持つには忙し過ぎるでしょう。これから 子供ができても、家族旅行にも行けないわ。クリニックなら 夜は家に帰れるし。」



と母は言う。


「ビルの中の病院って、結構 重宝なんだよね。仕事の合間に 診察してもらえるし。健康診断にも 使えるから。」


父も 樹の言葉を 後押しする。
 


「一度、場所を見てみなよ。検討できると思ったら 早めに 動いた方がいいよ。全面的に相談に乗るからさ。」



樹に言われて、翔は、
 

「奈緒はどう思う?」と聞く。
 

「私。すごく良いと思います。場所も良いし。一番心配なのは 資金のことだけど。クリニックが 軌道に乗れば 少しずつでも 返していけると思います。」



奈緒が答えると、母は、
 


「大丈夫。家族のお金だから。みんなで使えばいいの。私も昔 お母様に そう言われたわ。」

と言って微笑んだ。
 


「お母さん。」


と言って、奈緒は 言葉に詰まる。