「そうだったの。ありがとう。」
母は、そっと 涙を拭って 奈緒に言う。
奈緒は 驚いた顔で 母を見ると、
「いえ。お礼を言うのは 私です。」と言う。
「ううん。お母様 最後まで 誰かの力になれて。体が弱っても 誰かを 救うことができて。きっと喜んでいたわ。」
母の言葉に 奈緒は 顔を覆って涙を流す。
「すみません。初対面なのに。泣いたりして。」
少しして 顔を上げた奈緒が言う。
「私達もまだ お母様のこと話すと 涙が出るわ。」
と母は、静かに微笑んだ。
「お祖母ちゃん いつも 家族のこと 自慢していました。家族が 大好きだって。」
奈緒は そこで言葉を切ると 一度 翔を見た。
「お祖母ちゃんが言っていたこと 嘘じゃないって。本当に 素敵な家族。」
そう言って 奈緒は 言葉に詰まる。
「うちは 代々、人を見る目があるんだ。子供達もみんな 素敵なパートナーを 選んでいるからね。奈緒ちゃんも その一人だよ。」
父の言葉に もう一度、奈緒の目から 涙が溢れてくる。



