翔が 医師になろうと思ったのは、樹には 敵わないと 気付いたからだった。

父の会社を継いで、社員を 率いていくのは 樹だと思った。


父と叔父のように、樹の片腕になるには 自分は カリスマ性がないと 翔は思っていた。
 

中学生になったばかりの頃、翔は 医師が主役のドラマに 夢中になった。

“神の手” と呼ばれる 天才外科医が、難しい手術を 次々成功させて 命を救っていく。


翔は、自分も そんな風に 人を救いたいと思うようになった。


成績は 樹よりも優秀だった翔。

本気で 医学部を目指してみようと、兄に相談する。