翔は 兄のことが 大好きだった。

男同士の兄弟なのに、樹と翔は とても仲が良い。

小さい頃から、いつも 一緒に遊び、大きくなってからも 二人は よく話した。
 


樹は 穏やかで優しい性格だった。

父譲りの明るさで、いつも みんなを笑わせていて。


樹といると楽しくて。


翔は 学校から帰ってくると 必ず、
 

「お兄ちゃんは?」

と聞いていた。
 

「まだ 帰って来てないわよ。」

と母に言われると、翔は 少しがっかりして リビングで 宿題を開く。
 

「ただいま。」

と玄関で 兄の声がすると、翔は 玄関に駆けつける。
 

「ねえ、お兄ちゃん。算数教えて。」

と樹を出迎える翔。
 

「いいよ。何がわからないの。」

優しく答える樹に、翔は 笑顔で話し続ける。