#離婚#
結婚して第二の人生を豊と誓ったのに、私たちは結婚したら終わりを感じさせる結婚生活になっていた。
豊の落ち度は何もないのに、私の落ち度だけが増えていく。
そんなある休日、
「ゆう?この間さ、記念日の日に泊まったホテルあるじゃん?今日の18時に予約したから行こう」
突然豊に誘われた。
「っえ!今日?!!」
今日は何の記念日でもない普通の日。
豊の不倫を勘付いてしまったあのホテル。
私は正直乗り気ではなかったけれど、予約してくれたのもあって行くことにした。
私の不機嫌がいつまでも続いているせいで“癒しを”と気を遣ってくれたのかな。
豊はどこまでも優しい人だね。神様みたいな人。
あの時みたいにまたホテル内にあるBARで思い出を語り合った。
お酒の力を借りてなのか豊の思い出話は止まらない。
豊の話を私は親身になって聞く。
私に一度も涙を見せたことのない豊が時折涙を浮かべていた。
そんな姿を目の当たりにして自責の念が激しく迫り、何度も何度も心の中で謝罪をした。
1時間は余裕で過ぎただろうか、豊は下を向いて黙り込んだ。
眠ったと思いそっとしといてあげた。
「ゆう…」
「あっ!起きてたの?」
「俺、この先ゆうを……できない」
押し殺したような声で私は上手く聞き取ることができなかった。
「えっ?なんて言ったの?」
豊は顔を上げ私を見つめると、覚悟を決めたような真剣な顔つきで言い直す。
「この先ゆうを幸せにできない」
…
「ゆうを幸せに出来るのは俺じゃない」
「っえ!急に何…」
少し間を空け話を続ける豊。
「俺はゆうを愛してる。愛してるからこそ幸せになってもらいたいんだ。短い間だったけどこんな俺と一緒にいてくれてありがとな」
「何を言ってるの?短い間って…カップルみたいな言い方だね。意味が分からないんだけど?」
「分かってる…」
「どうしたの?酔いすぎちゃった?泣かないでよ…」
豊の様子が明らかにおかしかった。
一旦話を中断して豊に肩を貸しながら部屋に戻り、豊を椅子に座らせとりあえず落ち着かせた。
しばらく沈黙が続き、豊が自分の鞄から何かを取り出した。
不安な予感が隙間風のように吹き込んでくる。
それは…“離婚届”だった。
最悪なことに予感は的中してしまった。
「なに…なんで離婚届?」
「ごめんな…」
「いや!謝られても!意味わからないよ」
「余計なことは言わない!最後くらい男らしい姿を見せたいから」
オブラートに包んだ言い方に気が急ぐ。
「待って、どうゆうこと?酔った勢いなら度が過ぎるよ?これのどこが男らしいって言うのよ」
「酔った勢いなんかじゃないよ!ゆうを幸せに出来るのは俺じゃない」
「いま付き合ってる彼女さんの事が本命になったの?」
「違うよ…やっぱり俺が浮気してること分かってたんだな。ごめんな。確かに俺はゆうを裏切った。弁解の余地はないよ」
「もしそのことが原因なら私は口出ししないよ?一時の恋愛でしょう?」
「彼女とは別れたよ」
「そうなんだ…ならなんで?」
「言おうか迷ったけど…俺、社長さんと会ったんだ」
「社長さんって?」
「ゆうの仕事先のだよ」
「え?なんで?どうゆうこと?」
私は気が動転する。
「黙っててごめんな…ゆうが社長と出来てることも分かってたし、秘書をしてからゆうは生き生きしてた」
「社長とはもう別れてるけど、黙ってた私が悪かったよね。私も豊を裏切ってた。今更謝るのは卑怯だけど、ごめんなさい…」
「謝らなくてもいいよ!毎日が楽しそうなゆうと一緒にいれて俺は幸せだったよ。でもそれは俺といるからじゃなくて、社長がそばにいるからだと気が付いたんだ」
「確かに、ここ最近の私の生活は社長中心になってた。豊を悲しませてることも分かってるのに自分の都合のいいようにやってた。本当にごめんなさい…」
「ゆうの悲しい顔を見てさようならは嫌だから笑ってほしいんだ。ただそれだけでいい」
「私は離婚したくないよ!豊とずっと一緒にいる。今の会社は辞めるから。言い訳になっちゃうけど、別れてからすぐ辞めるべきだったのにそれが出来なかった…ごめん」
「さっき社長に会ったって言ったよね?」
「うん…」
「男の俺から見ても腹立つくらい素敵な人だと思ったよ。俺には到底敵わない。だから…“ゆうを幸せにしてあげてください”って頼んできた」
「…こんな時に冗談言わないでよ」
私は何が何だか頭の中が混乱してしまった。
「冗談なんかじゃないよ。そうしたら“必ず幸せにします”って。男と男の約束をしたから社長の言葉にきっと二言はないよ」
「そんなの嘘だよ!だって社長、私に何も言ってこないもん」
「「俺からゆうを説得するから社長の方からは何も言わないでほしい」って頼んだんだよ」
「こんな事言える立場ではないけど、なにも私たちが離婚することはないじゃん。やり直そう?妊活もこれから真剣に取り組んでいこうよ」
「社長の意志は固いと思う。ゆうもそんな社長を好きになったんだろう?最近のゆうは毎日が寂しそうな顔をしてたよ。社長となにかがあったんだと勘づいてた。その寂しさを埋められるのは紛れもなく社長だろう?」
その言葉に、口はぴたりと閉ざされ私は何も言えなくなってしまった。
「ゆうには幸せになってもらいたい。好きな人の幸せを願えない男は最低だからな…この先は社長が必ず幸せにしてくれるはずだから信じてついて行け」
物思いにふけるように押し黙ってしまった。
「豊…ごめんなさい…」
ぎこちない沈黙がしばらくそこに続く。
「…俺は大丈夫だから心配すんな」
なんで…そんな顔しないでよ…
“ふざけんなっ”って殴る勢いで怒鳴ってよ…
そうじゃないと私…
自責に心が耐えられなくなるじゃない…
私はその場で泣き崩れる。
「その涙はもう俺は拭ってやれない。俺が泣く前に出て行ってくれないか?21時にさくら大公園に行け」
えっ…
「さくら大公園?…」
「社長が待ってる…」
豊…ごめん…本当にごめん…
「頼むから早く行ってくれ…」
私は豊の顔を見ることなくその場を後にした。
私何してるんだろう…
泣きたいのは豊のはずなのに…
何も言ってあげられなかった…
私は放心状態のまま道を彷徨っていた。
21時はとっくに過ぎている…
「ゆうっっ!!」
背後からはっきりと聞こえる声。だが振り返る余裕などない…
思いっきり誰かに後ろから抱き締められた。
待ち望んでいた温もりに包まれたその瞬間、堪え堪えていた涙の堰を切って声を立てて泣き出す。
「ゆう…来てくれてありがとう…」
切り裂くように胸が痛んだ。
「もう離さないから…ここがゆうの本当の居場所だよ」
居心地のいい陽だまりを見つけた鳥のような心境。
“私を羽ばたかせてくれた2羽の青い鳥”
そして、私たち夫婦は離婚届を提出した。
結婚して第二の人生を豊と誓ったのに、私たちは結婚したら終わりを感じさせる結婚生活になっていた。
豊の落ち度は何もないのに、私の落ち度だけが増えていく。
そんなある休日、
「ゆう?この間さ、記念日の日に泊まったホテルあるじゃん?今日の18時に予約したから行こう」
突然豊に誘われた。
「っえ!今日?!!」
今日は何の記念日でもない普通の日。
豊の不倫を勘付いてしまったあのホテル。
私は正直乗り気ではなかったけれど、予約してくれたのもあって行くことにした。
私の不機嫌がいつまでも続いているせいで“癒しを”と気を遣ってくれたのかな。
豊はどこまでも優しい人だね。神様みたいな人。
あの時みたいにまたホテル内にあるBARで思い出を語り合った。
お酒の力を借りてなのか豊の思い出話は止まらない。
豊の話を私は親身になって聞く。
私に一度も涙を見せたことのない豊が時折涙を浮かべていた。
そんな姿を目の当たりにして自責の念が激しく迫り、何度も何度も心の中で謝罪をした。
1時間は余裕で過ぎただろうか、豊は下を向いて黙り込んだ。
眠ったと思いそっとしといてあげた。
「ゆう…」
「あっ!起きてたの?」
「俺、この先ゆうを……できない」
押し殺したような声で私は上手く聞き取ることができなかった。
「えっ?なんて言ったの?」
豊は顔を上げ私を見つめると、覚悟を決めたような真剣な顔つきで言い直す。
「この先ゆうを幸せにできない」
…
「ゆうを幸せに出来るのは俺じゃない」
「っえ!急に何…」
少し間を空け話を続ける豊。
「俺はゆうを愛してる。愛してるからこそ幸せになってもらいたいんだ。短い間だったけどこんな俺と一緒にいてくれてありがとな」
「何を言ってるの?短い間って…カップルみたいな言い方だね。意味が分からないんだけど?」
「分かってる…」
「どうしたの?酔いすぎちゃった?泣かないでよ…」
豊の様子が明らかにおかしかった。
一旦話を中断して豊に肩を貸しながら部屋に戻り、豊を椅子に座らせとりあえず落ち着かせた。
しばらく沈黙が続き、豊が自分の鞄から何かを取り出した。
不安な予感が隙間風のように吹き込んでくる。
それは…“離婚届”だった。
最悪なことに予感は的中してしまった。
「なに…なんで離婚届?」
「ごめんな…」
「いや!謝られても!意味わからないよ」
「余計なことは言わない!最後くらい男らしい姿を見せたいから」
オブラートに包んだ言い方に気が急ぐ。
「待って、どうゆうこと?酔った勢いなら度が過ぎるよ?これのどこが男らしいって言うのよ」
「酔った勢いなんかじゃないよ!ゆうを幸せに出来るのは俺じゃない」
「いま付き合ってる彼女さんの事が本命になったの?」
「違うよ…やっぱり俺が浮気してること分かってたんだな。ごめんな。確かに俺はゆうを裏切った。弁解の余地はないよ」
「もしそのことが原因なら私は口出ししないよ?一時の恋愛でしょう?」
「彼女とは別れたよ」
「そうなんだ…ならなんで?」
「言おうか迷ったけど…俺、社長さんと会ったんだ」
「社長さんって?」
「ゆうの仕事先のだよ」
「え?なんで?どうゆうこと?」
私は気が動転する。
「黙っててごめんな…ゆうが社長と出来てることも分かってたし、秘書をしてからゆうは生き生きしてた」
「社長とはもう別れてるけど、黙ってた私が悪かったよね。私も豊を裏切ってた。今更謝るのは卑怯だけど、ごめんなさい…」
「謝らなくてもいいよ!毎日が楽しそうなゆうと一緒にいれて俺は幸せだったよ。でもそれは俺といるからじゃなくて、社長がそばにいるからだと気が付いたんだ」
「確かに、ここ最近の私の生活は社長中心になってた。豊を悲しませてることも分かってるのに自分の都合のいいようにやってた。本当にごめんなさい…」
「ゆうの悲しい顔を見てさようならは嫌だから笑ってほしいんだ。ただそれだけでいい」
「私は離婚したくないよ!豊とずっと一緒にいる。今の会社は辞めるから。言い訳になっちゃうけど、別れてからすぐ辞めるべきだったのにそれが出来なかった…ごめん」
「さっき社長に会ったって言ったよね?」
「うん…」
「男の俺から見ても腹立つくらい素敵な人だと思ったよ。俺には到底敵わない。だから…“ゆうを幸せにしてあげてください”って頼んできた」
「…こんな時に冗談言わないでよ」
私は何が何だか頭の中が混乱してしまった。
「冗談なんかじゃないよ。そうしたら“必ず幸せにします”って。男と男の約束をしたから社長の言葉にきっと二言はないよ」
「そんなの嘘だよ!だって社長、私に何も言ってこないもん」
「「俺からゆうを説得するから社長の方からは何も言わないでほしい」って頼んだんだよ」
「こんな事言える立場ではないけど、なにも私たちが離婚することはないじゃん。やり直そう?妊活もこれから真剣に取り組んでいこうよ」
「社長の意志は固いと思う。ゆうもそんな社長を好きになったんだろう?最近のゆうは毎日が寂しそうな顔をしてたよ。社長となにかがあったんだと勘づいてた。その寂しさを埋められるのは紛れもなく社長だろう?」
その言葉に、口はぴたりと閉ざされ私は何も言えなくなってしまった。
「ゆうには幸せになってもらいたい。好きな人の幸せを願えない男は最低だからな…この先は社長が必ず幸せにしてくれるはずだから信じてついて行け」
物思いにふけるように押し黙ってしまった。
「豊…ごめんなさい…」
ぎこちない沈黙がしばらくそこに続く。
「…俺は大丈夫だから心配すんな」
なんで…そんな顔しないでよ…
“ふざけんなっ”って殴る勢いで怒鳴ってよ…
そうじゃないと私…
自責に心が耐えられなくなるじゃない…
私はその場で泣き崩れる。
「その涙はもう俺は拭ってやれない。俺が泣く前に出て行ってくれないか?21時にさくら大公園に行け」
えっ…
「さくら大公園?…」
「社長が待ってる…」
豊…ごめん…本当にごめん…
「頼むから早く行ってくれ…」
私は豊の顔を見ることなくその場を後にした。
私何してるんだろう…
泣きたいのは豊のはずなのに…
何も言ってあげられなかった…
私は放心状態のまま道を彷徨っていた。
21時はとっくに過ぎている…
「ゆうっっ!!」
背後からはっきりと聞こえる声。だが振り返る余裕などない…
思いっきり誰かに後ろから抱き締められた。
待ち望んでいた温もりに包まれたその瞬間、堪え堪えていた涙の堰を切って声を立てて泣き出す。
「ゆう…来てくれてありがとう…」
切り裂くように胸が痛んだ。
「もう離さないから…ここがゆうの本当の居場所だよ」
居心地のいい陽だまりを見つけた鳥のような心境。
“私を羽ばたかせてくれた2羽の青い鳥”
そして、私たち夫婦は離婚届を提出した。



