自慰表現アリアリ!中学生同士の恋愛です


俺は欲求不満だ。中学生の思春期なんて、みんなそんなもんだろう。性に興味があるが、だからといってそれが満たされる訳でも無い。毎晩手のひらの液晶と睨めっこして自らを慰めることなんて、数え切れないほどに繰り返した。でももう、飽きた。飽きたのだ。満足なんて出来なかった。満足どころか、自分のソレを液晶に広がる演技臭い行為を見つめながらしごきあげる自分が情けなく思えてきてしまった。収まらないこの気持ちは高まっていくばかりだ。

ドアノブに手をかけ、自室のベットへ飛び込んだ。枕元に転がっているスマホを手に取る。直ぐに気に入っていたアダルトサイトのページを開いた。検索バーに「日本人 セックス ハメ撮り」と入力。どこでそんな言葉覚えてきたんだ、なんて聞かれても分からない。物心が着いた頃から知っていたのだから、理由なんて説明できない。1番上の視聴回数の多い動画を開く。女の上に男が被さり、一生懸命に腰を振る。女はそれに合わせて喘いでいる。俺は急いでティッシュと手に取り、スウェットを膝下まで下ろす。取り敢えず落ち着きたいだけだから雑にしごく。
「は、は…っ」
息が荒くなる。動かす手を加速させる。出したらそれでいいんだ、それで収まるから。そんな思いで加速させた。気持ちよくないが、高まるものは高まるのだ。じわじわと湧き上がってくるソレに備えて、ティッシュを何枚か手に取り、自分のものに被せながらしごく。雑に、雑に。
「っ…く、」
白濁を放つ。慣れた手つきでティッシュに受け止める。いうて気持ちよくなかった。その割には脱力感と絶望感が押し寄せるのだ。その思いをティッシュに込めて、ぐちゃぐちゃに丸めてゴミ箱に投げこんだ。自然と訪れる睡魔に抵抗せず、俺はそのまま眠った。

「……ん……………」
目がパチリと覚めた。天井が広がっていた。
「………」
見たことがない天井だった。
「…?!」
勢いよく上体を起こし、周りを見渡す。…俺の右隣には、クラスの何度かしか話したことがない奴が寝ていた。丸眼鏡にセミロングの、名前は確か…院瀬見なんとかだ。下の名前なんて知らないような奴だ。というかまずここはどこだ?本当に知らない場所だった。部屋の中には俺らが寝ている大きいダブルベッド、二人がけのソファー、そして短い廊下にユニットバス、ただそれだけだった。だが、驚いたことに玄関が見当たらない。窓もない。密閉されたこの空間は、恐怖でしかなかった。急いでベッドに戻り、汗の滲んだ手で奴を叩き起した。
「おい!院瀬見、起きろ!」
ゆっくりと奴が寝返りをうち、こちらに視線を向けた。
「は、……ん……………は?」
ギロり、睨みつけられ背筋が凍る。確かにこんな状況不審でしかないだろう。状況を説明するべく、腕を掴んで無理やり起き上がらせた。
「は、なにすんの!離せ!」
奴は抵抗する。
「そんなこと言ってる場合じゃねえんだよ!この部屋、玄関がないんだ、閉じ込められたのかもしれない、俺ら、」
「は……?嘘…」
抵抗は静かに収まった。だが、共に恐怖になったのか、顔が青ざめて行った。
「そんなわけない!馬鹿みたいなこと言わないで!」
信じられないのだろう、奴は部屋を散策し回った。
「マジでない、どうしたら…」
「なにこれ」
奴は小さなメモを手にしていた。ナイトテーブルにでも置いてあったのだろう。
「なんだそれ!」
急いで駆け寄り覗く。小さく薄い文字で何か書いてある。
『ハグをしないと出られない。』
俺は寝ぼけているのか…?目を擦りもう一度目を凝らしてみるが、その文章が変わることはなかった。
「…」
「…」
沈黙が続く。奴も唖然としているようだった。
「え…?うそなにこれ、ほんとになに…?夢なの…?」
その言葉を聞き、自分の頬を抓る。痛かった。
「夢じゃなくないか…?」
「え…ねえ、ハグしたらほんとに出られる…?」
震えた声で問いかけてくる。
「そう…なのか、わからん」
「…」
奴は本当に怯えているようで、メモを持つ手が震えていた。
「とりあえず、落ち着こう、それから考えよう…」
「…うん」
俺はベッドに無造作に座り、奴はメモをナイトテーブルに戻し、ソファーに座った。
しばらくの間、俺らは呆然としていた。
「どうしよう…このまま出られなかったら…ねえ、ハグしよう、出られなかったとしても出来ることはしよう」
俺を見つめながら言ってくる。確かに俺だって今すぐにこの部屋から出たかったから、奴の意見に賛成だった。
「確かに、そうだな」
途端に奴はソファーから立ち上がり、ベッドへ登り目の前で正座した。何となく俺も正座した。
「どっちからやんの」
「いや、べつに…両方からでいいんじゃないのか」
「…そう」
タイミングが分からない。どういう感じにしたらいいのかも分からない…。別に奴を意識している訳では無いが、思春期同士だし、こんな状況だし、緊張するに決まってる。奴も下を向いているだけだ。どうしたらいいんだ…
「ハグしないの」
「いや…!お前こそ!」
「…!……じゃあ、せーのでしよう それでいいでしょ」
その名案に頷いた。
「……せーの!」
ふわ。ほぼ体に触れていなかったが、一応ハグの形にはなっていると思う。というか、心音がうるさい。いや、だから、意識してるわけじゃない。どうしてもこうなるに決まってるだろ。
数十秒が経過する。後でからかってやろう、と思い、チラ、と奴の顔を伺う。奴は目を強く握り、眉を寄せ、顔を赤らめていた。可愛いなんて思うわけないだろ、奴なんてただのクラスメイトだ。話したこともないような奴だし、こんな状況だぞ。そんな想い抱くわけないだろ!
心の中でうるさい考え事をしていたら、奴から体を押しのけてきた。
「もう、いいでしょ!結構長かったから、きっと出口もあるはず」
奴はパタパタと玄関があるであろう場所へ向かった。
「嘘……?」
俺も後を追う。そこに玄関はなかった。
「そんなわけない!あるって、絶対」
また奴は部屋を散策し始める。俺も散策した。壁も全部触ったし、バスルームも覗いた。だが、変化はなかった。ベッド付近へ戻る。ナイトテーブルが目の端に写り、目線をやる。そこには先程と変わらないメモ用紙が……ん?
「おい!みろ、これ!!」
『お互いを触らないと出られない。』
と書かれたメモを必死に見せた。
「……お互いを触らないと出られない………はぁ?!さっきと言ってること違うじゃん!意味わかんない!!!」
完全に混乱しているようだった。そりゃ、混乱しても無理はないだろう。
「…ねえもう、早くやろ ほんとに早く出たいし」
ベッドに俺を座らせ、急に手を握りだした。
「うお、」
「こうしないと出られないんでしょ?しょうがないじゃん キモい反応しないで。」
奴はそっぽを向きながら手を握っていた。
そのまま、時が過ぎるのを待った。
「ねえ、メモなんて書いてある?また文章変わった?」
奴が聞いてきたから、俺はメモを覗いた。
『お互いを触らないと出られない。』
「いや…変わってない。」
「出口ができたってこと…?見てくる」
急に立ち上がり、また部屋を散策し始めた。
「出口、ないよ…なんで」
「嘘だろ…?」
やっと出られると思ったのに。出口はなかった。
「足りない…ってことなの…?」
「…っ」
俺は言葉を詰まらせた。意識してないけど、他に触る場所なんて、それは…意識してないけど。
「あんたが私に触れようとしてないからじゃないの?!あんたも触ってよ」
大きな声で言われ、少し驚く。
「そう…なのか、でも、触られるのは、嫌じゃな」
「そんなことどうでもいいの、早く!」
「わかったよ、」
奴がベッドに上ってきたから、少しためらいつつも腕に触れた。パジャマのような長袖の服を着ていたから直に触れている訳では無いが、これもカウントされるのだろうか?
「直に触んなきゃ意味なくない」
「はっ…いや、直にって」
「もう!」
奴は急に俺の手を奴のお腹に当てた。直だったから、ふんわりと人肌の温かさが伝わってきた。正直、女子の体をこんなふうに触ったことないし、緊張する。と思えば、急にその手を動かしてくる。
「撫でたりしたら、効果あるんじゃないの」
顔を赤らめながら言う。ぶっちゃけ、俺も撫でたかったから、素直に頷いた。横腹ら辺を、円を描くようにして撫でた。手が汗ばんで、上手く動かせない。
「…ふっ……っ」
「ごめん、くすぐったかったか」
「べつに」
ゆっくりと撫でた。その途端
「ねえ!みて メモの文字が消えてる」
「…!!ほんとだ!」
急いで玄関があるであろう場所に向かった。案の定ドアがあった。急いでドアを開けた。光が目に飛び込んでくる。とても眩しくて、目を開けていられない。
「うわ、なんだこれ…!」
「まぶしい、…っ」
次第に意識は朦朧として行ったーー。