そう言う秋の声は小さく震えていて
このまま夜闇に溶け込んで消えていってしまいそうで、
私も背中に回した腕に力を込めていく。

「苦しくない?痛くない?」
「大丈夫だから、もっと強く抱き締めて。
僕が消えないように」

涙でぐしゃぐしゃになったお互いの顔を見つめながら
私達はそっと触れるだけの柔らかなキスをした。
触れるその全てが、ただ愛しかった。

***

ねぇ、秋。
私ね、秋ともっと色んな事したかったよ。
手を繋いでデートしたり、
いつか家族になったり。
でももうそんな時間はないから。
だからせめて最期まで、見届けさせて。