「なぁ、お前、もしかして何にも知らねぇのか?こいつの傷跡の事も。
彼氏失格だな、こいつは結局俺に従うんだよ
そういう風にしつけたからな」

男の下卑た笑い声が闇夜に響く。
父親の言う通り、私は逆らえない。
前の私なら逆らう気力もなかったから逆らわなかったのだろうが今は違う。
秋が居るから。
私はまだ良い、この身体にいくつ傷が増えようが一緒だ。でも秋に痛い思いはして欲しくなかった。
そんな決死の思いだった。

「貴方がどのような事をこの子にしてきたのか、僕は確かに知らない。
でもそれがこの子を守らない理由にはならない」

俯きながら聞いたのは、彼の酷く冷たくて低い声だった。
その声音から表情は伺えなかったが、
秋のがとてつもなく怒っているのは分かった。