「えっちょっ待ってください…!」
小柄な体であまり先に行かれると、見えなくなってしまう。
俺は慌てて先輩の後ろ姿を追いかけた。
急いで追いついて、非常階段の1段目に足を掛け上を見上げた。
すると、舞い散る桜の花びらの中で、先に踊り場についた先輩がこちらを見て笑っていた。
「遅いぞ〜1年!」
そのいたずらな笑みを見て、半ば諦めとともに確信する。
ああ俺、吹部入部するんだろうなぁ…
憧れの高校生活。
放課後はバイトしたり、友達と遊んだり、あわよくば彼女とデートしたり。
中学3年間は1年中ほぼ毎日部活に捧げてきたから、高校ではそんな風にのんびり過ごそうと思っていたのに。
さようなら、俺の花の高校生活。
階段差をもってしても見えそうで見えない、先輩の絶妙なスカート丈を見つめながら考える。
いや、これはこれで、ある意味華のある高校生活なんじゃないだろうか。
そう自分に言い聞かせながら、俺は急いで階段を駆け上がるのだった。
fin.

