「きみぃ〜1年生?もしかして入部希望かい?」
目の前に立って分かったが、俺より頭一つも小柄だ。
足が細くてスタイルが良かったから、遠巻きには気づかなかった。
「いやっ…まだ…迷ってるんですけど…」
こう言っては失礼かもしれないが、今まで中学校で接してきた女子たちとは明らかに違う、スカートの長さのせいもあるかもしれないけれど。
そして何だか少しいい匂いもする。
中1のときに中3の先輩が随分大人に見えて驚いたけれど、それ以上の衝撃があった。
「中学では吹部だったの?」
どぎまぎしながらも、やっとの思いで質問に答える。
「はい…」
「楽器は?」
「…ボーンです」
ボーンというのはトロンボーンの略称だ。
先輩は俺の答えを聞いて、ぱっと顔を輝かせる。
「ほんと!!ちょうど足りてないの!!」
その笑顔があまりにも眩しくて、俺は咄嗟に顔を背けてしまった。
しかし先輩はそんな俺の気持ちなど露知らず、背けた方にちょこちょこと横移動してまた顔を覗き込んでくる。

