俺たちは議論を続けながら、昇降口へと向かう。

1年生の教室は1階だから、昇降口も近い。


俺たちは「エロさ」には何が必要なのか、やっぱり手っ取り早いのは巨乳だなどと話しながら(念のために言っておくと、これも友人による発言である)、上履きからローファーに履き替えている途中で、友人は何かを思い出したように「あっ!」と声をあげた。



「やべ、俺今日、ダッシュで帰ってこいって言われてるんだった」



友人の実家は喫茶店を営んでいる。

中学時代部活帰りによく溜まり場にさせてもらっていたから、俺も馴染みのある店だ。


友人は両親が店を離れなければならない日に、こうして代わりに店番を頼まれることがしばしばあった。

俺も慣れっこなので、どんま〜い、がんば〜と適当に友人を送り出す。



友人は「すまん!じゃ!」と短く挨拶を済ませると、本当にダッシュで帰っていった。

あのダッシュぶり、話には聞いているが、相当両親が恐いらしい。



俺はその間抜けな後ろ姿を見送った後、ゆっくりと歩き始めた。


昇降口を出ると、下校する生徒や、運動部だろう、準備運動をする生徒、花壇をいじる生徒、あれは園芸部か?中学とは比べ物にならない位沢山の生徒がいた。


そのどれもがきらきらしているように見える。


高校生活が始まる、そんな実感がじわじわと湧いてきて、俺は期待に胸が膨らんでいくのが分かった。