馬鹿みたいに甘ったるい声であたしの名前を読んで、馬鹿みたいに優しい笑顔であたしを見つめて、馬鹿みたいに愛しそうにあたしに触れる。

それが、鬱陶しい、嫌いだって思ってたのに、今はこんなに心地いいなんて、最悪な気分だ。


きっかけは、二年前だった。

もともと束縛の強いあたしは、弘樹が友達と遊ぶのが許せかった。

それでもたまには息抜きとして楽しんできてほしいなと思って、年末の忘年会を友達とするというから、無理くり笑顔を作って送り出した。

もちろん、変な店にはいかないし、その場に女の子がいたらすぐに帰るって約束を弘樹からしてくれ、当然そうしてくれると思ってた。

だけど、日付をまたいだ帰ってきた弘樹の携帯をチェックすると、男だらけの写真の中に、一枚だけ。

弘樹と、女の子のツーショット写真があった。


居酒屋の狭い個室で、肩がくっつくほど近くに座って、顔を隠す女の子の隣で笑っている弘樹が、心底憎いと思った。