わたしの言葉に等既に耳を傾けるつもりはないらしく、子猫に顔をくっつけて’また明日な’と言う。

猫は猫で嬉しそうにみゃあと顔を上げて鳴く。

’たのしみ~たのしみ~さいじょーさん来てね~’と言ってる訳じゃないのに、わたしには嬉しそうな猫の鳴き声はそう言ってるように聴こえた。

ここまで来るともう末期なのかもしれない。猫の言っている言葉が分かるなど、友人に話せば笑われて馬鹿にされるに決まっている。


背中を向けたかと思えば直ぐにくるりとこちらを振り返って、西城さんはいつも通り意地悪な笑みを浮かべた。
さっきまでの優しい笑顔とは大違いの悪魔の微笑みだ。


「そういやアンタ、少し鼻毛出てるぞ?」

咄嗟に手に抱いていた猫で顔を隠した。

そうしたら猫は猫で嬉しそうに「みゃあ」と声を上げた。

くくッと意地悪な笑みを浮かべる悪魔、やっぱりこいつ大嫌い!

女の子に言う事ではないでしょう?!たとえ鼻毛が出ていたとしても、華麗にスルーするとかさ。まぁ鼻毛を出している事に気づかない自分も悪いのだが…

不覚。不覚すぎるわ。



「やっぱりアンタムカつくッ!」

「鼻毛くらい誰でも出るよ。人間だもの」

「何でみつをよッ!早く帰れー!もう二度と来るなーッ」