「アンタはすぐ泣くな」

「これは…婚約指輪ね」

「ばあーか。この俺様がガラスの安っぽい指輪を婚約指輪にするかよッ。
それにアンタのような欲深い女はハリーウィンストンが好きだろう?しかもでっかいダイヤがついた悪趣味な奴」

彼の意地悪な言葉に、首を横に振る。

「わたしはあなたの手作りの指輪の方が嬉しいわ……」

「余り可愛い事ばかり言うな」

そう言って、泣きじゃくるわたしの身体をそっと抱き寄せた。

「25歳、おめでとう」



桜 ひとひら舞い落ち
その淡さに心奪われ

この手の中揺れ堕ちた
世界で一番美しい物を
いつだって、わたしへ見せてくれる。




特別な人間には、結局なれなかったけれど

わたしはこの手の中に世界で1番美しい物を見せてくれる、あなたに出会えた。

それはどんな高級ブランドよりも、美しい容姿よりも、楽しいパーティーよりも、尊いもの。
あなたはわたしへいつだって大切な物を教えてくれた人だった。