けれどわたしが誰かの目に強く映るのだとしたら、それは西城さんがいたからだと思う。
今もとてもじゃないけど強いとは言えない。威圧的な彼の祖父と何度対峙した所で相変わらず震えは止まらないだろうし。
けれどもう諦めないと決めた。自分だけは自分を見捨てないと決めた日から。
強くなくていい。自分が決めた軸がブレなければ良い。その気持ちを忘れないでいれるのならば、わたしは弱いままでも良かった。
予定外に夕飯までご馳走になってしまった。
’わたしは料理が余り得意じゃないから’そう彼のお母さんが言うから、もっぱらこの家の家事は玄さんの仕事なのだそう。
とても見事な料理を披露してくれた。彼のお父さんもお母さんもよく喋っていた。
けれど、彼自身は驚く程無口だった。わたしの両親の前ではあんな大人びていると言うのに、そこはやっぱり実の両親だ。甘えている所もあるのだろう。
そして帰り際、お母さんはパウンドケーキを持たせてくれて「また来てね」とあの優し気な微笑みを浮かべた。
車内に戻り車を走らせても数分彼は無口なまんまだった。機嫌が悪いのとはまた違う。何かを考えるように真っ直ぐ前だけを見つめ、ハンドルを握っていた。
「良いご両親じゃないの…」
「さぁな。よく知らん。まぁお母さんが何を考えているのかは分からん人だと言うのは昔から知っていたが…
父が甘党だと言うのは軽い衝撃だった。…アンタと楽しそうに話してるのを見て鼻の下を伸ばしてるのを見て、笑えた」



